新型レヴォーグのAWDが面白い
新型Levorg STI(VN5)には「ドライブモードセレクト」が装備されており、Comfort、Normal、Sport、Sport+の4種類のプリセットおよびユーザーが任意のパラメータをセットできるインディビジュアル(Indivisual)の5パターンから走行モードを選ぶことができます。
エンジンスタート時のデフォルトは「Normal」となっていますが、ステアリングの専用ボタンを押すか、センターインフォメーションディスプレイから任意のモードを呼び出すことができます。設定される項目は以下の6項目となっていて、プリセットの場合はあらかじめ各モードで決められた設定値が選択されており、個別変更はできないです。Indivisualにすると、全てのパラメータを自分で任意にセットできます。
<ドライブモードセレクトで設定でされる項目>
- パワーユニット:エンジンの出力特性(I/S/S#)
- ステアリング:ステアリングを回す時の重さ(Comfort/Normal/Sport)
- サスペンション:サスペンションの硬さ(Comfort/Normal/Sport)
- AWD: AWD(4WD)制御の変更(Normal/Sport)
- EyeSight:クルーズコントロール利用時の前車追従の具合 (Eco/Comfort/Standard/Dynamic)
- エアコン:エアコンの特性変更(Mild/Normal)
それぞれの解説はどこか別でするとして、今回はAWD設定について話します。
AWDにはNormalとSportの2種類に分かれていますが、プリセットではSport+の場合のみSportにセットされます。私はSport+はあまり使わないため、Indivisualで自分の好みを登録しており、その中でAWDをSportにしています。
<AWDをSportにセットすると>
AWDをSportに設定すると、後輪側に駆動配分されるのが明確に感じられます。ワインディングを走っていてコーナーを抜けて再加速するとき、強めにアクセルを踏むとお尻あたりから押し出される感覚があるんですよね。
また、コーナー進入の手前等でブレーキングしつつシフトダウンを行ったときにも違いがあります。AWDがNormalの場合はエンジンブレーキが前輪側にかかっている感覚があり、フロントの沈み込みも大きいのですが、AWDをSportにしてシフトダウンすると、後ろ側から引っ張られるように減速し、フロントの沈み込みもNormalより少なく感じます。
このクルマのAWDはスバルの標準的なAT車用のAWD機構であるACT-4であり、基本駆動配分(Front/Rear)が60:40で運転状況に合わせて100:0から50:50まで制御されるとされています。AWDがNormalの場合は、制御はごく自然で、あまりリア側で駆動しているという感覚はありません(従来のACT-4と同じ感覚)。
ところがAWDをSportにセットすると、後輪への駆動配分をしっかり感じられるようになります。シフトダウン時にも後輪側への駆動が残されており、エンジンブレーキによる後輪側での制動感も感じることができます。
この駆動感、制動感は前車のレヴォーグVM4では一切感じたことのない感覚ですので、新型LevorgでのAWD制御がの変更がドライブフィールに大きく影響しているのだと思います。
これによって、FF的な乗り味からFR的な乗り味までの変化を楽しめるという、非常に稀有な特性を実現しています。(実際にはAWDですのでFFになったりFRになるわけではありません。走行フィーリングについてです。)
評論家さんの試乗記等でもこのAWDの設定値(Normal/Sport)による差異に触れている記事は非常に少ないですが、実際のところAWDの設定は走行感覚に大きな変化を与える非常に興味深い設定項目です。新型Levorg STIスポーツはZFの可変ダンパーが大きな注目を集めており私もそれに興味を引かれた一人ですが、このクルマで走行フィーリングにもっとも大きな影響を与えるのは、実はこのAWDのNormal/Sportの設定ではないかと思います。
残念ながら、そこそこスピードが乗っている状態でないとそこまではっきりとは感じられないので、ディーラー試乗レベルだとわからないかもしれませんが、もし試乗で試される場合は、ドライブモードをSport+にして、少し速度をあげたところからパドルシフトで2段階くらいシフトダウンをすると、エンジンブレーキによる制動が後輪側にもかかっている感覚が感じられるかと思います。